ヴァイオリンには弾いた痕が残ります。 この1/16サイズを弾いていた4歳の女の子は弾くのが大好きだったようです。 ふつうでない鳴らし方をした痕が表板のニスにひび割れとして残っています。下3枚の写真の右側でその痕を見てください。 ヴァイオリンの音を高・中・低音域と3つにわけると 高音域は 「 弦の振動 」( 定常波 )を受け止めた駒で直接鳴らす ● Aの音と 弦の揺れが上下の胴体ブロックを揺らす動きにあわせて● Fと ● G がF字孔に倒れ込むように揺れるうちの ● G 側の揺れをうけた ● Bの音が主に受け持っています。 区別しやすいように ● Aの音は弦直接で ● Bの音は胴体直接と覚えてください。このうち ● Bの音を作る ( 振動させる )にはしっかりしたボーイングが必要なので 一般論でいえば1/4サイズの小学校 1年生くらいで出来たら早いほうでしょう。 もし ● A、●B両方鳴らせる子供さんのヴァイオリンの音をきいたら 皆さん 『 ほぉーっ!』と思うはずです。それはかなりめずらしい経験だからです。 この1/16サイズを弾いていた4歳の女の子を指導した先生ははじめに彼女が出した音を聞いて顔色がかわったと思います。 下の写真中央に弓に先生が目印に刻んだキズの丁寧さに、先生が指導に注いだ真剣さを感じるからです。
棹に直にキズをつけることに是非はあるでしょうが この弓については ” 佳い景色 ” だと思います。 さて、このヴァイオリンのニスに入ったヒビ割れについてですが ベクトルAが2本、Bが10本、Cが4本と割れ1本で 振動のモードについての説明は省きますがとにかく感心する程よく歌わせています。 私には小さいヴァイオリンなのに聞いた方を幸せにできる美しい音色であったとわかります。 このとき4歳の女の子は 1992年には 東京国際コンクールと日本音楽コンクールで1位を獲得し室内楽の演奏を積極的に行うとともに、2006年からは東京都交響楽団副首席奏者として活躍されています。 彼女の名前は 菅沼ゆづき さんです。 室内楽の演奏活動はとくに定評があります。 もし聞かれたことがありませんでしたら一度足を運ぶことをお勧めします。
私はこういうヴァイオリンを目にすると 『 人間って いいなぁ…。』 と思います。