1987年5月18日の東京文化会館大ホールでの出来事です。 74年に祖国ソ連を離れ チェロの演奏が伝説化しかけていたロストロポーヴィチ ( 1927~2007 )さんの久しぶりのリサイタルで聴衆の熱烈な拍手に応えてアンコールが続きその4曲目( ! )にバッハの無伴奏のサラバンドを弾き終わった直後でした。 音楽評論家の吉田秀和さんは 『 … 彼は 無伴奏 第二番のサラバンドをやったのだが、これがすごかった。 そこからきこえてきたのは無限の悲しみと澄みきった諦観(ていかん)とが一体になったような響きであって、この夜それまで鳴っていた音はすべて この響きの前に けしとんでしまった。 - 1997年1月8日朝日新聞:夕刊より。 』 と書かれています。 私も2000人以上の聴衆の一人として演奏が終わった直後の 『 シーン。』と静まり返った時間を経験しました。 時計の秒針だとおそらく20秒もたっていなかったと思いますが 今まで経験したことが無いほど長い時間に感じ少しめまいを覚えながら幸福な瞬間に浸っていました。 ロストロポーヴィチは演奏で2000人以上の心を完全に捉えるのに成功したのです。 音楽ってすごいですね!