カール・ズスケさんに教えてもらったこと … 。

2011-2-14  15:00

       

1994年11月23日の事でした。 演奏会のために来日したチェリストのユルンヤコブ・ティムさんから 急ぎの依頼がありました。 それは今回の演奏会に使用するチェロの 駒と魂柱を製作するとともに エンドピン、テールピース、糸巻き、弦を一晩で交換整備してもらいたという事でした。   こうした経緯があったので 私は演奏ツアーの最終日の 12月9日に チェロの調子を確認するためにコンサートに出かけました。 そして演奏会の終了後にレストランで、小さいテーブルの向こうは左側からティムさん、通訳の方、ズスケさんが座られ食事をしながら4人でお話をしました。

私が 衝撃をうけたのは ティムさんと 駒のバランスや楽器の鳴りかたの感想などのやり取りが済み、右側に座られている カール・ズスケさん( 1934年 北ボヘミア地方の リベレッツ ‐ 旧ライシェンベルク 生まれ。)とお話しを始めた直後でした。 私が 『 ヴァイオリンの響きが 「 美しい 」と感じました。』 と言うと、ズスケさんが 『 うん …! ところで君は僕のヴァイオリンを知ってる? 』 と尋ねられました。 私が 『 いいえ。』 と答えると 彼は 『 僕のヴァイオリンは 作られてから … えぇっと … 今年で 28年めなんだよ!』 と言われたのです。     なにがショックかというと、 彼は 1966年に ドイツ・ハレの弦楽器製作者 ヨアヒム・シャーデさん (  Joachim Schade was born in 1934, in Halle .  )に作ってもらった楽器で演奏していたのに 私は 『 当然 !』 オールド・ヴァイオリンを使用していると思い込んで聴いていたのです。 しかし 演奏を聴いている私が 違和感を感じることは一度もなかったのです。

私は この日からしばらく 『 あの音が … わずか28年しか経っていない楽器が出していたとすると … 。』 と考え続けました。 お陰さまで この事が自分が製作すべきヴァイオリンのイメージにつながりました。 そういうことで 私は現在も この日の出来事に感謝をしています。

この写真は 参考のために ヨアヒム・シャーデさん (  Joachim Schade was born in 1934, in Halle .  )が 1983年に製作したものを使用させていただきました。 因みに 現在、ハレにある工房は息子さんの Jens Peter Schade さんに引き継がれています。             http://www.schade-geigen.de/