オールド・ヴァイオリンでは エンドピンホールが開けてある側板の高さは 29ミリから32ミリほどですから標準値を31ミリとすると その中央より 2ミリから3ミリ上を中心としてエンドピン ホールが開けてある場合が多いようです。
11ヶ所めの チェック・ポイントは ” 側板の中央より 2ミリから3ミリ上を中心としてエンドピン ホールが開けてあった跡があるでしょうか?” です。 これを見るには多少の知識が必要ですから 下にあげておきます。
ここで ヴァイオリンの ”疲労破壊” の お話をします。 現在 その原因を ”強度不足”と思い込んだ方が増えましたが 、ほんとうは ① ヴァイオリンのバランスが不調和の状態で鳴らしたことにより表板に歪がたまり変形が進み ② エンドピン・ブロックと側板の接着部が上からエンドピンに向けて剥がれていくか割れが入るかしてブロックが不安定となり ③ 弦の張力でブロックと一諸にエンドピンが傾き側板にヒビを入れ ④ 枠の支えが弱くなったために表板の歪がより増え大きな割れが入る。という “逆ぞリ型”破損がその典型です。 上写真のエンドピンホールの左右のひび割れもそうして入りました。
それを知っていると 下の写真のヴァイオリンのように埋めてあっても A-B ラインに割れが入っており Cの位置に破損で傾いたエンドピンの食い込んだ跡があることから エンドピンホールは 内円の位置に開いていたとが推測できます。
難しいのが 下写真のように元の側板が裏板側で 少なくとも2ミリは削られている 『 ホリゾンタルが失われた楽器 』 です。 こういう修理がなされている場合は状況をつかむために採寸したうえでの検討が必要となります。