12. 表板ジョイントの角度 。

12ヶ所めのチェック・ポイントは ” 表板のジョイント ( 中央部にある板の継ぎ目 ) が胴体の 「 最良のネジレ 」 を意識して 設定されているでしょうか?” です。 例として3つのタイプを 下にあげました。

左側に多数派の ” 左回り型 ” ( 反時計回り型 )の例として Nicola Gagliano ( 1675~1763 )が 1725年頃制作したヴァイオリンをあげ、中央に ” 右回り型 ” として その息子であるガリアーノ兄弟( Giuseppe Gagliano 1726~1793 , Antonio Gagliano 1728~1805 )が 1754年に制作したヴァイオリンをあげました。 そして右側には ジョイントを中央より右側においた ” 完全非対称型 ” として Barak Norman の1700年頃の作とされるビオラをあげました。 オールド・ヴァイオリンの ” 響 ” を生みだすための大事な 「 条件設定 」ですので 注意深くチェックすることをお勧めします。

因みに下の写真は ウィーン・フィルの弦楽器で有名な Geisenhof Franz Thir ( 1754 ~ 1821 )のウィーンの工房で Mathias Thir ( 1741 ~ 1806 ) が 1795年に製作したヴァイオリンを 私の工房で撮影したものです。

   

後ほどお話しようと思いますが 表板のジョイントや木理は裏板のそれと組み合わせてあります。 よって上の表・裏板ともに一枚板のオールド・ヴァイオリンにみられるように、 表板はほんのごくわずかだけ ” 左回り型 ” ( 反時計回り型 )としてあり その分 裏板を大きく回した ” 木組み ” で、 製作者が意図した動きをさせようとした弦楽器も多いです。
よって 表板が回してあるか判断がつかない弦楽器は あとの裏板の木理とあわせてお考えください。