17. F字孔ウイング角度

上の写真は 1998年にロンドンで Peter Biddulph が出版した原寸大写真集 ” Giuseppe Guarneri del Gesu “ の110 ~ 111 ページの 1741年 ” Kochanski ” を引用させていただきました。  F字孔ウイング ( F字孔の両外側部 )は オールド・ヴァイオリンでは 真横からみた角度がかえてあります。 ここは E線側がG線側より平らに削ってあります。 F字孔のスリットが E線側から見ると幅広だからすぐにわかると思います。
ということで チェック・ポイントの17ヶ所目は 『 F字孔の外側ウイング部分の角度が 左右で変えてあるでしょうか? 』 です。 ここは 下の写真にあるように ヴィオラ・ダ・ガンバの時代から フラットぎみに削られていました。

                 

Joachim Tielke   1683  Hamburg

http://www.orpheon.org/oldSite/Seiten/Instruments/vdg/vdgb_tielkevdg.htm

例として Nicola Gagliano ( 1675~1763 )が 1725年頃制作したヴァイオリンをネック側からエンドピン方向にむけて 私の工房で撮影した写真で F字孔外側のウイング角度をみてください。

 

念のために、このヴァイオリン表板を真横から撮影したモノクロ写真を 下にあげておきます。 E線側のF字孔外ウイングが G線側よりかなり平らなのがみえると思います。

これらの角度は下にあげたCarlo Antonio Testore ( 1687~1765 )が 1740年頃に制作したヴァイオリン表板を 私の工房で真横から撮影した写真で見えるように、 一台づつアーチや F字孔の形状によって合わせてありますので見慣れていない方には細かい差異はとらえにくいでしょうから、 さきほど指摘したF字孔の左右のウイングが角度差をつけてあるという一点でチェックするのが現実的だとおもいます。

下に私の工房で1702年に Matteo Goffriller( 1659~1742 )が制作したヴァイオリンを撮影した写真をあげておきます。
よく見ると 左右のウイングが角度差をつけてあるのが見えると思います。

 

上の写真は ウィーン・フィルの弦楽器で有名な Geisenhof Franz Thir ( 1754 ~
1821 )のウィーンの工房で Mathias Thir ( 1741 ~ 1806 ) が 1795年に製作したヴァイオリンを 私の工房で撮影したものです。 このように左右のウィング角度の差は 多くのオールド・ヴァイオリンで簡単に確認できる特徴なのです。