私は 弦楽器の響きが倍音特性にたよって説明されているのを耳にすると 少し心配になります。 それが重要なのは言うまでもありませんが ‥ 弦楽器は音色をゆたかにするために複数の波源が生じるように工夫されるなど、いくつかの条件の合わせ技でその響きが生みだされているからです。
私はこれらの技術の端緒は 古の弦楽器製作者の日常のなかにあったと考えています。
そこでその一例として皆さんに 硬貨を落としてしまったシーンをイメージしていただきたいと思います。 最初に百円硬貨でいきましょう。 さて‥ どういう音がするでしょう?
そして次に五円硬貨を落としました。これはどうでしょうか?
これらの音の差をご存じ無い場合は、恐縮ですが 下の動画を参考にしてください。
この動画でも分かるように 百円硬貨は震え方の違いによりいくつかの振動モードがその響きを生みだしますが、それは主に”外側のへり”から発生しているようです。
ところが穴があいている五円硬貨は”外側のへり”に加えて “内側のへり”も 音を出しているのでそれぞれの振動モードが生みだす二つの音が同時に聞こえると思います。
私は こんなに単純な形状の違いでも 思った以上に明瞭な響きの差につながっている事実が大切と思っています。
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Josef Naomi Yokota