自作弦楽器

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さて‥ ヘッド以外のネックと指板部が準備できましたので、いよいよ本日より SUさん依頼楽器の ヴァイオリン・ヘッド 製作を開始しました。

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本日のネック部の状態です。

2016-10-24   18:47

このヴァイオリンは現在 SUさんが使用している楽器と使用上の違和感があまりない規格を設定することにしています。

依頼者のヴァイオリンは パーツ無しの重量が 332g です。またネック部規格は ネックの厚さは 16.8mm – 19.8mm で、指板は 21.6mm – 41.9mm – 270.0mm ですので、私は ネック部規格は上画像のように 指板 22.5 – 42.1 – 267.5 で 47.0g 、ネックの厚さは 17.3mm – 20.0mm に設定しました。

%e6%8c%87%e6%9d%bf-2-lなお、このヴァイオリンの響胴は 352.5 – 167 – 107 – 208 で重量を 230g と想定していますのですので 二枚削ったうちの 48.2g ( この後表側を仕上げたので仕上がりは 47.0g です。 )を選びました。

なおバランス設定計画のうち ネック部は 今回からペグを取り付けた状態を基本と考える事にしました。この部分の重量は 115g と予定しています。

%e6%8c%87%e6%9d%bf-1-lなお重心位置はネック端に合わせてあり、 リンシード仕上げも施してあります。

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さて指板側からナット位置まできましたので次はペグボックス部です。

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私事で恐縮ですが これまで基本設定を ヴァイオリンに駒、魂柱、ペグ、エンドピンなどのパーツが無い状態として来ました。

しかし最近の事ですが この設定仮説はペグが含まれる方が 最終バランスを想定しやすい事に気付きましたので、今回よりこの設定で弦楽器を製作することにしました。

2016-10-25-su-violin-a-lこのヴァイオリンのために準備したペグ・セットは 15.6g です。
ですから本日時点でのネック部重量は 130.6g となります。

なお‥ ネック部が想定の 115g より軽くなった場合は響胴部の重量を 230g より抑えてバランスをあわせる予定です。

2016-10-25   19:00

今日は ペグボックス内側の 粗削りをおこないました。

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26日時点での ペグを含むネック部分の重さは 123.2g となりました。

明日からはこのペグボックス部の 削り込み作業を 予定しています。

2016-10-26-su-violin-3-lNeck  累計作業時間       72時間( 9日 )
2016-10-26  21:34

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JIYUGAOKA VIOLIN  - G
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CELLO  - U    L   2015 9 18
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さて、ペグボックス部は まず 外側の不連続面にとりかかりました。

今回のヴァイオリンも ペグボックス部の横側( チーク・オブ・ペグボックス )と裏側面そして 中央尾根部やエッジ部の設定は ‘不連続面’によってヘッドの揺れを複雑化させる古典的な技法に学ぼうと考えています。

 

チーク・オブ・ペグボックスが不連続面とされているのはヴァイオリンだけではありません。 参考として 今年の4月28日にインディアナ州の自宅で88歳で亡くなられたヤーノシュ・シュタルケル( János Starker   1924 – 2013 )さんが使用していたチェロの画像を貼らせていただきました。このチェロでも” スジ状キズ線  ” などの ” 工具痕跡 ” が確認できます。
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ところで チェロのヘッドはヴァイオリンより大きいので”オールド・バイオリン”などを製作した弦楽器製作者の『 匠の技 』を確認することができます。これはヘッドのバランス調整技術のひとつでヘッド製作時の最後に左右のスクロール・サイドのうち高音弦側( 私は区別のためこちらを R側とし、低音弦側を L側と呼んでいます。)のカールなどを削り込んでヘッドのゆれを補正する技術です。
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これを 東京都交響楽団の首席チェロ奏者が使用していた Nicola Albani ( worked at Mantua and Milan, 1753 – 1776 )のチェロのスクロールで見てみましょう。

           

オールド・チェロの時代には 上右写真の ▼Flat と書いてあるスクロール側面は多少の起伏だけで『 特殊な加工 』は加えず、反対側の ▼Unevennessとしている部分には 下の写真のような意図的な彫り込み加工がなされているものがいくつも製作されました。

私はこの特殊な加工を『 パティーナ加工 』と呼んでいます。
私のホームページにおいて別の投稿でもふれていますが『 オールド・バイオリン 』などの研究の結果‥  これらは製作時にタップなどでネックやヘッドのゆれる条件を確認しながらバランスを調整した痕跡と私は考えています。

そこで皆さんに この設定が分かりやすいように横方向に約5倍に引き延ばしたチェロ・ヘッド画像を並べてみました。

Giovanni Battista Guadagnini   ( c.1711 – 1786 )   Cello 1777年            ” Simpson “

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Giovanni Battista Guadagnini   ( ca.1711 – 1786 )   Cello 1777年           ” Simpson “

                   Domenico Montagnana    ( 1686 – 1750 )   Cello   Venezia  1739年   ” The Sleeping Beauty ”
   …         Domenico Montagnana     ( 1686 – 1750 )     Venezia    Cello  1742年

       

一見して判断出来ることすらあるチェロにくらべて ヘッドが小さいので細やかな観察が必要ですが『 オールド・バイオリン 』にも ペグボックス部の横側( チーク・オブ・ペグボックス )の不連続面の組み合わせが見事なものがたくさんあります。

  
Giuseppe & Antonio  Gagliano ( Giuseppe 1726 – 1793 , Antonio 1728 – 1805 )1754年

   

上写真のヴァイオリンはペグボックス部の横側( チーク・オブ・ペグボックス )が 不連続面なのが比較容易に確認できます。 画像を拡大するとライン上の赤色点の場所に焼いた針でつけた可能性が高い針痕がならんでいますし、 以前の投稿でふれましたようにヘッドのゆれを補助するため A~D の ” スジ状焼線  ” や、 ” 工具痕跡 ” が 複雑に組み込まれているのはこの写真からも感じられると思います。


Mattio Goffriller  label( 1670 – 1742 ) Viola  Venezia    1727年頃製作

ビオラのチーク・オブ・ペグボックスの参考としてこのヘッド写真をあげさせていただきました。


Giovanni Paolo Maggini (  1580 – c.1632  )cello   Brescia   1610年頃製作

このチェロ・ヘッドの写真もとてもわかりやすくて良いと私は思います。

 

一昨日より裏板にも取り掛かりました。

2016-11-03-su-violin-1-l2016-11-01    712g
2016-11-02    504g
2016-11-03    495g
2016-11-04    365g /     Back plate 28時間

パフリング工程対応サイズ      353.0 – 167.0 – 108.5 – 206.0
2016-11-03  14:19

2016-11-04-su-violin-1-l今日は朝から 裏板のアーチ削りでした。

2016-11-04-su-violin-2-lBack plate 累計作業時間 28時間( 4日 )
Arch    18.7mm    /    365g

2016-11-04  21:36             Joseph Naomi Yokota