オールド・ヴァイオリンのコーナー側線角度は 75%以上の確立で傾斜させてあります。

私は弦楽器製作者としての活動初期に、音響的なクオリティーが高いヴァイオリンを識別するのに・・ コーナー部の側線の角度が傾斜させてあるか。をその判断基準としていました。

Violin corner lateral line angle

 ( 上記の角度数値は、画像解析による個人的な参考値です。)

それは、音響的に優れたヴァイオリンは 4本あるコーナー部の側線の角度がホリゾンタル面に対して 垂直である確率は低いという事実に気がついていたからです。

ですから、多少なりとも古い楽器の場合は 響胴コーナー部の側線がホリゾンタル面に対して垂直に作られているものは贋作である可能性を念頭に 観察していました。

それから 側線傾斜型の代表格として、高音側ロワー・コーナーで 4.2度も側線を傾けて製作された Stradivari ( ca.1644-1737 )   “Hamma”   1717年と、 “Guarneri del Gesù” ( 1698-1744 )  “Enescu – Cathedral”  1725年頃 は非常に興味深いヴァイオリンであると思っていました。

Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 )  Violin,  ” Wurlitzer Collection” No.1 ( #7502 )  1681年

Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 )  Violin,  “Hamma”   1717年

Francesco Goffriller ( 1692–1750 )  Violin,  1719年頃

“Guarneri del Gesù”  Bartolomeo Giuseppe Guarneri ( 1698-1744 )   Violin,   “Enescu – Cathedral”  1725年頃

Nicola Gagliano ( ca.1710-1787 )   Violin,  Napoli   1737年

“Guarneri del Gesù”  Bartolomeo Giuseppe Guarneri ( 1698-1744 )   Violin,   “Carrodus”   1743年

しかし、残念なことにヴァイオリン側板のコーナー部側線の角度は 正確に測定することが ほぼ不可能ですので、その検証を一旦は諦めました。

ところが時が経ち オールド・チェロを観察するうちに『 この両者は共通の考えに基づいて製作されており、側板幅があるチェロの場合は測定誤差がすくない。』と思うようになり 再検証をすることにしたのです。

Giovanni Battista Genova ( worked ca.1740-ca.1770 )
Cello, Turin  1770年頃

Giovanni Paolo Maggini ( 1580- ca.1633 )  Violin,  Brescia  1620年頃

Giuseppe Guarneri  “Filius Andreae” ( 1666- ca.1740 )  Violin,  Cremona   1703年

Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 )   Violin,  “Viotti”  1704年

Giuseppe Guarneri  “Filius Andreae” ( 1666- ca.1740 )  Violin,  Cremona   1717年頃

Camillo Camilli ( ca.1704-1754 )   Violin,   Mantova   1735年頃

Giovanni Baptista Guadagnini ( 1711–1786 )  Violin,
“Ex Sinzheimer”   Turin   1773年頃

Giovanni Baptista Guadagnini ( 1711–1786 )  Violin,  Turin  1775年

このようにして得た結論が『 オールド・ヴァイオリンと オールド・チェロの両者とも4本ある側板のコーナー部側線角度の組み合わせで響胴のねじりを誘導している。』というものでした。

コーナー部側線角度の組み合わせは いくつも類型がありますが、私は ヴァイオリンでもよく見られる  AU側線と 対角の CL側線を”対”として傾けてあるタイプが、響胴のねじりが素早そうですから 気に入っています。

Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 )  Cello ( Length of back 765mm – 369 – 265 – 473 ) ,  “Harrell – Du Pre – Guttmann”   1673年 

Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 )  Cello,  Cremona   1667年

Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 )  Cello,  Cremona   1724年

“Old Cello” ( F. 734-348-230-432  B. 735-349-225-430 /  Stop 403mm  / F-F b.100mm  )   1680~1700年頃

Giovanni Grancino ( 1637–1709 )   Cello,  Milan   1701 年

Giovanni Grancino ( 1637–1709 )  Cello,   Milan   1690 年

Gioffredo Cappa ( 1644-1717 )
Cello,   “Jean-Guihen Queyras”   1696年頃

Matteo Goffriller (1659–1742)
Cello, “Daniel Muller – Schott” 1727年頃

Giulio Cesare GIGLI,     Cello,  Rome   1757年
Back 1 piece of maple 50mm thick.
Total length 1270mm,  Body length 733-336-236-436.

Nicola Albani (  Worked at Mantua and Milan 1753-1776  )
Cello, Milan  1770年頃

このように 私が検証した限りでは、オールド・ヴァイオリンやオールド・チェロに4本あるコーナー側線が傾いている確率は75%以上という値となりました。

 

2021-9-26         Joseph Naomi Yokota

 

● コーナー部側線角度の自由さはどこからくるのでしょうか?

●   “オールド弦楽器”の 特徴について