ヴァイオリンや チェロの響きは すぐに良く出来ます。

 

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皆さんは ヴィオール・オイル( Viol )をご存じでしょうか。ポリッシュオイルでは定番の ドイツ製の磨き油です。なお、現在の税込定価は 2,160円となっています。

穏やかなポリッシュオイルで 成分的にも安定しているため、弦楽器工房はもとより 多くの演奏家にも愛用されています。

viol-a-lこの ヴィオール・オイル( Viol )の一般的な使用法は 柔らかい布に少量をしみこませ ニス部に塗布して、その後に別の柔らかい布でふき取るように磨きこみます。

残念ながら 効力が続くのは  2~3日ですが、ヴィオール・オイルで丁寧に楽器全体をみがくと、明らかに音色が良くなる場合が多いようです。

さて本題ですが、私は 皆さんに この ヴィオール・オイル( Viol )を綿棒で下のように塗ることで響きが改善することを確認していただきたいと思います。

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実験は簡単です。綿棒を使って 私が 【 No. 2 model 】と呼んでいる図の 14本の赤線部に ヴィオール・オイルを線状に塗布します。
viol-c-l上写真のように 紙定規を使えば なおさら良いですが、私の経験では フリーハンドでも十分効果があると思います。
viol-q-l煩雑に見えるかもしれませんが 下の写真の白字の番号順で、ヴィオール・オイルを塗布するのに必要な時間は 約1~2分位だと思います。

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また チェロやビオラでは この【 No. 3 model 】の方がバランスがよい場合も多いようです。

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皆さんに この塗り方の劇的な効果を楽しんでいただければ幸いだと思います。

2016-10-19     Joseph Naomi Yokota

 

皆さん、継ぎネックなどの際は ヘッドのヒール部に気をつけてください。

jacob-stainer-1617-1683-violin-nicola-gagliano-1675-1763-violin-3-l弦楽器工房の関係者でも ご存じな方がすくないようですが、『 オールド・バイオリン 』などの弦楽器ヒール部は ヘッドのゆれを留めにくいように製作されていたようです。

特にヒール・カーブは確認しやすいですので調べてみてください。

そもそも、『 オールド・バイオリン 』などの継ぎネックのときに 「 ??? 」という経験をされた方は多いと思います。

そういうことで‥ 私は 摩耗でこの形状になることは 100% 無いと信じています。

2016-10-19    Joseph Naomi Yokota

このヴァイオリンは 私が側板を復元しました。

 

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old-violin-a-mono-lこれは私が 12年前に販売したもので、所有者の方の希望により側板幅の復元を中心とした整備を先日、 総費用 ¥ 1,000,000- で行なったものです。ニス補修前の資料写真ですから 側板の裏板側の復元部が 分かりやすいと思います。

この楽器は 私が販売したときには すでに内部の表板側ライニング幅が 5.0 ~ 6.2mmに対して 裏板側ライニングが 2.0mm以下となっていたり、側板幅に対してエンドピン穴が不自然な位置となっていて 製作時より削られ改変されているのがあきらかでした。

もちろん それは販売価格にも反映されていましたので 承知のうえで所有者の方は購入してくださいました。

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それでも このヴァイオリンは 楽器としての性能が良好でしたので 購入者の方は10年以上の期間、 購入時の状態で愛用されていました。

ところが、その後に 私の自作ヴァイオリンを購入され弾き比べるうちに 「 新品でオールドの音がさせられるという事は、はじめに購入した『 オールド・バイオリン 』はもっと凄い音がさせられますよね!」とお考えになり、「 この際ですから 費用は構わないので 徹底的な整備をお願いします。」となりました。

因みに この方は 原子炉技術関係者なので「 響胴内の空間形状を考えると‥ 側板は 調和可能な最大値としてください。」とのことでしたので 私がこの数値を決定しました。

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さすがに側板のほかに ブロック入れ替えやライニング、継ぎネック、バスバー交換、指板、ナット、サドル、駒、魂柱の作り直し、表板ブロック部修復や ペグ、テールピース、エンドピン交換など‥ 考えられるすべての変更をおこないましたので 組み立てて響きを確認するまで私は緊張し続けました。

しかしそれらは、整備後の音を聞いた瞬間に報われました。
それは 大きな達成感を私にもたらし、依頼者を十分に満足させるものでした。

それにしても 表板アーチが 20.7mm、裏板アーチが 19.1mm のヴァイオリンで 、側板幅がネック側 29.7mm で、エンド側が 32.9mm は凄かったです‥ 。

2016-10-18   Joseph Naomi Yokota

 

本日よりブログを再開します。

old-violin-5-l2016-10-18   Joseph Naomi Yokota

過去ブログ

750-jahre-berlin

 

私は J.F. ケネディが 1963年6月 西ドイツ・ シェーネベルク市庁舎前で 『 自由世界にいきる我々は、どこにいても ベルリン市民である。』 とした演説に共感をおぼえた世代です。

1989年11月9日 雑誌取材でコラムニスト『 えのきどいちろう  』は ベルリンにいました。 彼は『 ”壁”がある東西ベルリンを取材中に”壁”の崩壊に立ち会い、俺って持ってると思った!』 といっていました。 その彼のお土産が 東ドイツ発行の『 ベルリンの街が誕生して 750年 記念切手 』でした。

昔のことですが、私は 1987年の西ドイツ・フランス合作映画 、ヴィム・ヴェンダース監督作品 『 ベルリン天使の詩  』がお気に入りで、有楽町の古びた映画館に4、5回は通いました。守護天使のダミエル( ブルーノ・ガンツ )が カシエル( オットー・ザンダー )に別れを告げ舞い降りた” 流れの瀬 ” で飲むコーヒーを幸せな心持でながめていました。

映画の冒頭のハントケの『 わらべうた 』 にショツクを受けたのをいまでもよく覚えています。

ベルリン天使の詩( うた )

子供は 子供だった頃
腕をブラブラさせ
小川は 川になれ
川は 河になれ
水たまりは 海になれと思った

子供は 子供だった頃
自分が 子供とは知らず
すべてに魂があり
魂は ひとつと思った

子供は 子供だった頃
なにも考えず
癖もなにもなく
あぐらをかいたり とびはねたり
小さな頭に 大きなつむじ
カメラを向けても 知らぬ顔

子供は 子供だった頃

皆さんもご存じなように 1961年8月13日から建設が始まった 『 ベルリンの壁 』は 1989年11月9日開けられ、1990年10月3日 統一ドイツが誕生しました。

私は 時折この切手をながめては 『 時が経つとは、こういう事か…。』 と思っています。

(  2010-11-17  blog より  )

○   このヴァイオリンは 私が側板を復元しました。

 

弦楽器製作における 失われた技術について ‥‥ その確認方法

 

2014-10-22 Cello - B L
私は 18世紀末までの弦楽器製作者は 響胴の’節’と’腹’の原理をほぼ正確に理解し、実際に用いていたと考えています。

この投稿では 黄金期の弦楽器製作技術の特徴を見ていただき、そのあとで検証実験についてお話ししたいと思います。

Matteo Goffriller (1659–1742) Cello Venice 1705年 - 1 L
数年前に亡くなった ヤーノシュ・シュタルケル(János Starker  1924 – 2013 )さんが使用していたチェロは、1705年にベネチアで Matteo Goffriller ( 1659–1742 )  が 製作したものとされています。

Matteo Goffriller Cello Venice 1705年 MONO - 1 L
このチェロにはへり部分の’傷’が 沢山( おそらく200個程‥ )ありますので、A ゾーンと B ゾーンの’傷’もたやすく確認できます。

Matteo Goffriller (1659–1742) Cello Venice 1705年 - 3 L
この部分の’傷’は ストラディヴァリ・ソサエティの エドゥアルド・ウルフソン( Eduard Wulfson 所有し、ナターリャ・グートマン( Natalia Gutmanさんが使用している グァルネリ・デル・ジェスが製作したとされる チェロとも共通しています。

Guarneri 'del Gesù' cello 1731年 - C L
Guarneri 'del Gesù' cello 1731年 - B L
Bartolomeo Giuseppe Guarneri ( 1698-1744 )
Violoncello  1731,  ” Natalia Gutman ”

このガルネリが製作したチェロは  A ゾーンと B ゾーンの’傷’がとくに深くつけられています。

Domenico Montagnana Cello 1730年 - B L

それから 1982年にニューヨークで生まれたチェリスト、アリサ・ワイラースタイン( Alisa Weilerstein )さんが 2014年から使用しているチェロにも同じ特徴があります。

Domenico Montagnana Cello 1730年 - C MONO L
この楽器は Domenico Montagnana が 1730年に製作したとされています。そして この楽器ではA ゾーンとB ゾーンの傷が 確認できるとともに、C ゾーンの ‘深い傷’ も見ることができます。

Domenico Montagnana Cello 1730年 - A L
因みに C ゾーンの傷は、ヨーヨー・マさんが使用している Domenico Montagnana が 1733年頃に製作したとされるチェロにも ついています。

Domenico Montagnana Venezia ( Yo-Yo Ma ) 1733年頃 - A MONO LDomenico Montagnana Venezia ( Yo-Yo Ma ) 1733年頃 - A L

また C ゾーンの傷には このチェロのように ‘修復’として埋められていても、アーチの特徴などから 見分けるのはそれほど難しくない事例も多いようです。

Old Italian Cello c1680 - 1700 ( F 734-348-230-432 B 735-349-225-430 stop 403 ff 100 ) - A L
Old Italian Cello    1700年頃
( F 734-348-230-432,  B 735-349-225-430, stop 403 ff 100 )

これらの特徴的な’傷’が『 オールド・バイオリン 』の時代の弦楽器に認められることを 皆さんはどうお考えになるでしょうか。

私は 同時期に製作されたへり部分がオーバーハングしていない弦楽器に 答えをもとめました。

joachim-tielke-1641-1719-viola-da-gamba-1683%e5%b9%b4-hamburg-1-lJoachim Tielke ( 1641-1719 )  Viola da gamba  / Hamburg   1683年

joachim-tielke-1641-1719-viola-da-gamba-1683%e5%b9%b4-hamburg-2-lJoachim Tielke ( 1641-1719 )  Viola da gamba  / Hamburg   1683年

giovanni_dandrea_lira_da_braccio_1511_khm-2-lLira da braccio  by  Joannes Andreas ( Giovanni d’ Andrea) , Verona

giovanni_dandrea_lira_da_braccio_1511_khm-1-lLira da braccio  by  Joannes Andreas ( Giovanni d’ Andrea) , Verona

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私は下の写真のように これらは ‘節’としての ‘折れ軸’を調整した痕跡と考えています。

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ところで 私は チェロを製作するとき ‘座標’や ‘折れ軸’としてこれらの線分を 表板で 100本、裏板は 60本設定し利用しています。

言うまでもなく、これらは 私が「オールド・チェロ 」などの分析から導き出したものです。

Matteo Goffriller (1659–1742) Cello Venice 1705年 - 3 L

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ルーマニア生まれのチェリスト Mirel Iancovici さんが使用しているチェロもこんな感じです。

これらの軸は弦楽器にとって’節’の要素も兼ねる重要な条件だと 私は考えています。

そこでここから その効果を確認する実証実験についてお話ししたいと思います。

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皆さんは ヴィオール・オイル( Viol )をご存じでしょうか。ポリッシュオイルでは定番の ドイツ製の磨き油です。なお、現在の税込定価は2,160円となっています。

この製品がいつから輸入されているのか正確には分かりませんが、少なくとも私は 34年前から使用しています。

穏やかなポリッシュオイルで 成分的にも安定しているため、弦楽器工房はもとより 多くの演奏家にも愛用されています。

viol-a-lこの ヴィオール・オイルの一般的な使用法は 布に少量をしみこませ ニス部に塗布して、その後に別の柔らかい布でふき取るように磨きあげるそうです。

残念ながら 効力が続くのは  2~3日ですが、ヴィオール・オイルで丁寧に楽器全体をみがくと、明らかに音色が良くなる場合が多いようです。

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さて本題ですが、私は 皆さんに この ヴィオール・オイル( Viol )と綿棒を使って ‘折れ軸’の検証実験をすることをお奨めいたします。
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viol-p-l実験は簡単です。綿棒を使って 私が 【 No. 2 model 】と呼んでいる図の 14本の赤線部に ヴィオール・オイル( Viol )を線状に塗布します。
viol-c-l上写真のように 紙定規を使えば なおさら良いですが、私の経験では フリーハンドでも十分効果があると思います。

下図のように 裏板は 2本ですが、表板は 7本ですのでよろしくお願いいたします。
viol-q-l私の経験では 綿棒を用い 下の写真に指定したように 白字の番号順で、14本の軸にヴィオール・オイルを塗布するのに必要な時間は 約1~2分位だと思います。

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私はフリーハンドで塗っていますが、下のように 紙定規で目測をたててから ガイドとして線状に塗布する作業のほうがやり易いとの意見もありました。

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viol-o-l私の研究では この【 No. 2 model 】は ヴァイオリンなどの2番線を中心に音色を改善する効果がみとめられました。

また、チェロや ビオラなどの場合は 下にあげた【 No. 3 model 】で試すことを私はお勧めします。
viol-r-l【 No. 3 model 】は 裏板の線分AB の角度がすこし違います。こちらのパターンは チェロなどの3番線、そして4番線の改善が見込めるのではないかと 私は思っています。

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この実験では ヴィオール・オイルを塗布していない状態で音階を弾いたあとで、 手早く塗布して すぐに試奏し その後柔かい布でふき取ってから もう一度試奏する。

これを 2セットほど繰り返せば実証実験としては十分ではないかと思います。なお、ヴィオール・オイルは ほとんどのヴァイオリンやチェロのニスに適合しますが 念のために 実験を終了する際には柔かい布でふき取るように磨くのを忘れないでください。

また、この実験は フルサイズ弦楽器だけでなく 分数サイズのヴァイオリンでも コントラバスでも効果が確認できると思います。

なお新作イタリーのようなアーチがフラットな弦楽器だと より劇的な変化が楽しめるのではないでしょうか。

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CONTRABASS - B
これらの軸は響胴に一定のバランスを生みます。

それは例えればバランスが取れずに歪みが溜まり振動板として機能出来なくなったコントラバスの表板に、下写真のように バスバーの形状を工夫して線分 abと 線分cdの曲がりを誘導し 表板に振動板としての機能を回復させるのに似ているのではないでしょうか。

CONTRABASS - F
冒頭で述べましたように 私は 18世紀末までの弦楽器製作者は 響胴の ‘節’と’腹’の原理をほぼ正確に把握し利用していたと考えています。

そしてその本質的な証明は ヴィオール・オイルを塗布する実験方法で、ある程度は可能と考えています。

これは 先程例示した【 No. 2 model 】と【 No. 3 model 】を選択する過程でわかったのですが、ヴァイオリンやビオラ、チェロを演奏できる状態で準備して、塗布していない状態で音階を弾いたあとで 下の表板図から線分を一本だけ選びヴィオール・オイルを塗布したあとで再び音階を鳴らしてみてください。

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ヴィオール・オイルによって’軸線’と’響き’の関係を一本づつ確認するこの実験には 多少の時間と根気が必要になりますが、その結果は 皆さんに 弦楽器音響システムの意味を十分教えてくれると私は信じます。

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この投稿は以上といたします。
ありがとうございました。

2016-10-12    Joseph Naomi Yokota