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Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 ) Cello, “Bonnet” 1693年
Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 ) Cello, “Bonnet” 1693年
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Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 ) Cello, “Bonnet” 1693年
Antonio Stradivari ( ca.1644-1737 ) Cello, “Bonnet” 1693年
これは 2012年に私が製作したヴァイオリンの裏板です。
私が 2013年に着手したチェロの裏板は これらのヴァイオリンで学んだ要素をかなり反映させました。
2013年10月1日 チェロ裏板 外側アーチ部粗削り終了
ただし‥ チェロは ヴァイオリンの4倍、或いは 8倍程の面積や体積がありますので、削れば消える軸線を鉛筆で書き込み続けるだけでも大変です。
因みに、Giovanni Battista Guadagnini ( 1711-1786 ) が 1743年頃製作したチェロ “Ngeringa” Piacenza は 総重量 2456g ( Front 716.8 – 338.8 – 231.2 – 425.9 / Back 716.6 – 340 – 228.7 – 423.3 / Stop 391.0 )は、表板の重さ 387g ( アーチ 25.4mm ) – 裏板の重さ 482g ( アーチ 30.9mm )。
同じく G.B. Guadagnini の 1757年製チェロ “Teschenmacher” Milan は 総重量 2584g ( Front 717.0 – 339.3 – 247.1 – 420.9 / Back 712.2 – 332.7 – 237 – 419 / Stop 391.1 )では、表板の重さ 319g ( アーチ 28.4mm ) – 裏板の重さ 464g ( アーチ 36.4mm ) とされています。
私は このようなオールド・チェロを参照にしましたので、この時 製作したチェロの表板は バスバー無しの白木状態で 350g以下で、裏板は 550g以下、側板部が 500g以下とバランスを定めて作業を進めました。
このため、その工程で剛性に関する問題も解決する必要を抱えることになりました。
また、最終的には箱状になりますので 裏板、表板ともパフリングより外側の縁部が側板とリレーションし易いように、側板に合わせた状態でアーチの削り込みや 縁の厚さの調整が必要でした。
2014年1月5日 チェロ裏板外側のアーチ部で削り込みによって消えた軸線を書き込んでいるところです。
因みに、私は 軸線設定が狂わないように、このチェロ専用の裏板外型枠を製作しました。
2014年2月6日 この裏板 ( アーチ 32.6mm ) は 外側削りの仕上がり重量が 1900g でした。
2014年8月4日 この裏板は重さが 528g となり駆動性も良い状態で仕上がりました。
私は ヴァイオリンという楽器は ビオラやチェロと比べて共鳴現象が不全でも F字孔がエネルギー変換の受け皿になりやすいため、チェロやビオラと比べて 破綻しにくい弦楽器であると考えています。
逆に言えば、チェロやビオラは響胴の共鳴部が十分に機能しなければならないので 変換効率の側面から、完成度の高いものを製作することは ヴァイオリンを製作するより相対的にむずかしいと言えます。
Joseph Naomi Yokota Violin, Tokyo 2008年
そこで 私は「オールド弦楽器」の特徴から 音響システムとして仮説を立てた上で、まず 検証ヴァイオリンの製作を 2004年11月11日に着手しました。これは 7年程の期間に及びましたが、試行錯誤しながら 7台のヴァイオリンを製作しました。
そして この過程で 仮説の音響システムに修正を加えながら、それをヴァイオリン族のプロト・タイプとして確定させました。
この準備を経た 2011年3月7日に、私は いよいよ‥ チェロの設計に取りかかりました。
ここから この時に製作した、私にとっての 原型チェロ ( Prototype cello ) の お話しをさせていただこうと思います。
■ 響胴の軸組み調整
これは 響胴に組み上げに着手したところで、ネックやF字孔の設定と 駒位置やブロック配置により 表板と裏板の基本となる軸線の組み合わせのバランスを修正しているところです。
私は 表板側の軸線を このように設定しています。
この表板側の軸線は 側板部とも連動します。私は 特にブロック部との関係が重要だと考えます。
そして、これにネックやサドル、エンドピン、それから表板と裏板のパフリングより外側部が 加わることで 楽器的個性が生れていると思っています。
たとえばネックの水平面上での傾きは、この 1700年頃製作されたチェロのようになっていたと考えています。
このチェロは 1986年の接ぎネックの際に、ネックが向かって左回りに起こされていますが、元々NHK交響楽団OBのチェリストが使用していた時は もっと幅が狭くてボタン部もクラウン無しで小さい設定であった製作時の様子が残っていました。
ですから この写真の時点では ネックがだいぶん起こされていますが、元の傾きの名残で右に傾いている様子は確認出来ると思います。
このようなネックの役割のうち “ネジリ” に関しては チェロとヴァイオリンは割合が違うだけで類似していますので、私は 1950年代にアメリカで撮影された ヴァイオリン演奏を鏡像の動画にしてあるものが、最も分かりやすい資料であると思います。
そして、サドル位置も同じ理由で黎明期から 上写真のような位置として設定されていたようです。このチェロでは「オールド弦楽器」の復元楽器としてこのように表板と側板、そして裏板のバランスを設定しました。